【活動報告】NPO法人夢ノ森伴走者CUE 訪問記録
2024年9月30日本業務は、「環境教育等による環境保全の取組の促進に関する法律」(平成15年公布・平成23年改正)に基づき、環境省が設置した近畿エリアの中間支援拠点 “近畿環境パートナーシップオフィス(通称:きんき環境館)” の業務として実施した活動報告です。
きんき環境館については、下記のリンクよりご覧いただけます。
https://www.kankyokan.jp/
2024年8月1日。
兵庫県で神戸市に次ぐ第二の都市、姫路市。市の交通の中心である姫路駅から車で北へ30分ほど行ったところに夢前(ゆめさき)町があります。
姫路市の中心部とはまた風景の違う、田んぼや川、山並みに囲まれた穏やかな場所です。
今回はこの姫路市夢前町で地域のために奔走する、「NPO法人夢ノ森伴走者CUE」さんにお会いしてきました。
まず向かったのは老人ホーム「光寿園」。この一角で、Caféむすびめを運営しています。
以前は旅館だったというこの建物。玄関を入るとNPO法人夢ノ森伴走者CUEの代表であり、地域のおたすけマンでもある向山遥温さんが迎えてくれました。疲れを主張するTシャツの猫とは裏腹に、元気いっぱいでこのカフェの事を教えてくださり、なんだかこちらも元気になってきます。
(Tシャツに「す~っごく疲れたニャ~」とあります。そして向山さんのこの笑顔。)
Caféむすびめは木曜日と土曜日の週2日、10時から15時まで営業しています。
「このソファのカバーにしている着物の端材も、カップも、地域の方にいただきました。このエプロンも、地域の方に作っていただきました。」
たくさんの地域の方に支えられている場所だということがヒシヒシと伝わってきます。
老人ホームの中にあるということもあって常連さんも多く、1日に15人ほどお客さんが来るのだそう。
「あそこ(キッチン)にいるのが僕の祖母、あっちのソファに座っているのが自治会長、その向かいにいるのが僕の祖父です。」
こうしたカフェのような居場所が開かれると、だいたい場所を開いた人と同年代が集まり、それ以外の年代の方が集まりにくいということがあります。しかし、その点ここは多世代経営。いろんな世代の方が来ます。地域の方がここを使ってイベントをすることもあります。
(開放感と雰囲気の良さに思わず笑顔になる筆者。向山さんが奥でお茶の用意をしてくれています。)
(夢前のルイボスティー。どのメニューも地域のゆかりのあるものです。)
こちらは人を募集する掲示板。草むしりをやってくれる人や誕生日を祝ってくれる人が募集されていました。こうして手伝ってくれる人や、いてほしい人を気軽に募集できる場所があるのは良いですね。
大きな集落に見えた夢前町の中心部ですが、実は少子高齢化が進んでいて、小学校の児童数もとても減っているのだそうです。夢前高校も生徒数が減っていて、数年以内に少し東にある福崎高校と統廃合することになりました。高校の生徒は福崎高校に通うことになります。
その後場所を移動して、夢ノ森伴走者CUEが里山整備を行っている現場を見せていただきました。
急な勾配のないとても入りやすい山で、この日はヒグラシがたくさん鳴いていました。
元々この山は向山さんの祖父であり夢ノ森伴走者CUEの理事である松浦さん(先ほどカフェにいらした方です)や地域の方が手分けして山の手入れをしていたのですが、高齢で手入れできなくなってきた場所もあります。夢ノ森伴走者CUEでは、山を地域の場所として使えるように、助成金を使って倒木の撤去や地域のみなさんとの里山整備を行っています。
山の手前にある、向山さんのひいおじいさんが建てたという蔵で、ヤマビル対策をしてから山に入ります。
まず林道のすぐそばにあったのは広場。ここはキャンプに使う場所で、ほかにも蓄光ガラスをシャンパンタワーのように組んだオブジェを囲んでみんなで過ごすイベントをするそうです。このイベントはエコバークあぼしや地元企業に協力していただいているそうで、ここにも地域とのつながりを感じます。
キャンプ地を通り越し林道を進むと、すぐに森の中に。ここが、これから里山整備をして人々の居場所になるところです。奥に行くにつれて少し段差と勾配があり、区画が分かれています。山に一歩入っていくごとに、少し涼しい山の空気や木々のにおいを感じます。
空間の脇に流れている川を補給スポットにしてスプラトゥーンのような遊びをやってみたいというアイデアがあるとのこと。想像力で夢が広がりますね。
ここに12人ほど学生メンバーが集まり、他にどんなことができそうか考えているそうです。
遠方からは興味のある方が、近くからも家族の知人や山の持ち主の方など、ここで実施するイベントにはカフェと同様に学生メンバーだけでなくいろんな年齢層の方が来ます。
ここに来る人達が、もっとやりたいことをやれるようにするために、これから必要な物資や資金を確保していく予定です。とはいえ、整備後の倒木の使い道やこの山で一緒に自然に関わってくれる専門家とのつながりづくりなど、これから考えることもたくさんあります。
全国あちこちの田舎で、たくさんの人が試行錯誤する地方創生。向山さんは夢前での活動をどのように考えているのでしょうか。
「ここが、帰ってこられる場所になってほしい。
地域での町おこしは必要だと思う一方で、たくさんの人がそこに移住してくるというのは現実的には厳しい。それなら関係人口を増やした方がいいんじゃないか、と思いました。夢前町に一定期間移住して、次は別の町に行って…。この方法が現代社会には合っていると思います。
ここにずっと住むんじゃなくて、何か困ったことがあった時にたまに来る、くらいがいいと思うんです。
環境について何か取り組みたいけど、どんなことをすればいいのかわからないな、という若い方にこそ来てほしい。そうした人たちの「やりたい」スイッチを僕たちや企業の方、CUEの理事など大人の人たちの力で、全力でサポートしたい。何がやりたいのかは一人一人が見つけていける。僕たちはそんな人たちの伴走者なんです。」
向山さんは兵庫県の環境審議会委員として第6次環境基本計画の策定にも携わっています。兵庫県の環境部長さんが、若い方の意見も取り入れたいと言ってくださっているのだそう。誰かに支えてもらっている実感が、誰かを支えたいという原動力になるのかなと感じました。
蔵に戻り、話をしながらお茶をいただきました。時間はもう夕方。涼しい風が吹き抜けます。
向山さんにお話を聞けたことだけでなく、実際にカフェと里山の現場に行くことができて良かったと思います。私たちにとっても、また帰りたいなと思える素敵な場所でした。
(お~いお茶に見せかけて、筆者のお茶だけ中身が夢前のルイボスティーでした。ラッキー